「フィンランドの教育力」現地の小学校教師が書いた本物のフィンランド教育の本

 

「フィンランドは教育界のユートピア?」

 

「宿題もテストもないのに、学力世界一の国フィンランド」こんな情報をインターネットで見たことがある人もいるのではないでしょうか? そんな記事を書いた人は100%フィンランドに行ったことがない人です。

行ったこともない人が好き放題、web上で伝言ゲームを始めるので「フィンランド教育」はいろんな噂に包まれています。結局は自分でフィンランドに行ってみるのが一番早いのですが、質の高い本を読むこともオススメです!僕の一押しが本書です。フィンランドで長年小学校の先生を務めたフィンランド人、リッカさんの著作なので、圧倒的に内容がリアルです。日本人が数週間視察したぐらいじゃ全くわからないような、生の原体験が詰まっているので、フィンランドの教育のリアルを知るためには一番オススメの本です!

 

タイトル:フィンランドの教育力 なぜ、PISAで学力世界一になったのか (学研新書)

著者:リッカ・パッカラ

出版社:学研新書

 

本書を読んで、3つの要点と、学びメモをまとめました。  

 

①フィンランドの教育改革 最大の特徴は「裁量権」

 

ポイント

1. 資源の乏しいフィンランドでは、「人に投資しないと未来がない」

2. 1968年に当時29歳のヘイノネン教育大臣が大胆に教育改革

3. 最大の改革は、「教育現場の学校や教師が裁量権を持てるようになった」こと

4. 政府からのガイドラインはあるが、授業の内容や教え方、使用する教科書などは教師が自分で選ぶ

中央から地方へ裁量権が移され、同時に学校及び一人ひとりの教師に決定権がもたらされたのです。それは信頼があってはじめて任されたことでしょうし、それぞれが暮らしているエリアについては、学校が一番よく知っているという証です。”(No.187より引用) 

 

学びメモ

フィンランド教育は、教材の華やかさやIT機器などが注目されることが多いです。しかし3ヶ月毎日小学校に通い詰めて一番驚いたのが、「先生の裁量権の大きさ」です。例えば、先月フィンランドで視察した小学校の歴史の時間。歴史の時間で「中世の城」をテーマに学習していたのですが、なんと先生の采配で子供達が本格的なお城を作っていました。工作の時間ではなく、歴史の時間です。細かな隠し扉や城の中の畑まで再現されており、細部にこだわる過程で、自ら詳しく歴史を学ぶ生徒が多いんですって!日本史の戦国時代の授業にも活かしてみたいものです。

  

②現場の裁量が高いフィンランド教育のベースは「信頼関係」

 

ポイント

1. 高い裁量という「自由」には、子どもの学びへの「責任」もつきまとう

2. 裁量が増えたことで、教師の仕事量はむしろ増えたという側面もある

3. 教師がきちんとしていないと、親は校長にも報告する

4. それでも成り立つのは、校長や親、行政との間に現場の先生が信頼関係を築いているから

 “結局のところ、教師は行政からも親からも信頼されているのです。この信頼が教師のモチベーションになります。” (No.199より引用)

 

学びメモ

「裁量権がある」といえば一見華やかですが、簡単なことではありません。能力も責任感もない人に、裁量を任すとクレームの嵐です。

そこで、大切になるのが信頼関係なんですね。信頼関係とは、「先生と生徒」「先生と親」の関係はもちろん。「先生と政府」の関係も含まれています。政府が先生を信頼していなければ、ここまで大胆な改革はできません。一方で、先生が政府を信頼していないまま大改革をすると、現場の先生の猛反対が起こります。

「フィンランド教育」と聞くと特殊なノウハウがあるのかと思いきや、人として大切なことを愚直に行なっているのも大きな特徴ですね。

 

③フィンランド教育にも課題はある。日本の教育で素敵な点もある。

 

ポイント

1.フィンランド教育は素晴らしい点も多いが、完全無欠の「教育のユートピア」という訳ではない

2. 例えばフィンランドにだって、いじめは存在しない訳じゃない

“「うちの学校には、いじめはありません」と校長先生が言ったなら、その人は校内のことを何もわかっていないか、嘘をついている校長です。フィンランドでは学校にいじめがあることは誰でもが認識しています。” (No.1562より引用)

3. 日本の教育から学べることもある。例えば「掃除の習慣」など

 

学びメモ

「フィンランド教育」を絶賛する人たちに対して僕が声を大にして、届けたい情報です。かつての僕がそうだったように「フィンランドは教育のユートピア」と捉えている人は多いように感じます。教育は「人の感情」「社会情勢」などなど様々な要素との絡みによって成り立つので、よその制度を輸入すれば解決するほど簡単なものではありません

むしろ、僕がフィンランドの教育に魅力を感じるのは「現状の教育に課題と伸び代があると捉えて、最速で改革し続けている」ところです。

 

   

読み終えた感想

 

「もっと本当のフィンランド教育を知ってほしい」そんな思いで、この記事を書きました。

どうしてもメディア上では、「自然の中での学び」「授業時間が少ない」と言った、「わかりやすい面」が注目されやすいです。でも、僕が思うフィンランド教育の真髄は「改革のスピード」「それを支える信頼関係」です。

言葉にすると簡単ですが、学校の先生の全ての関わり(学校の上司に同僚、親に政府に、何より生徒)全ての人と良い信頼関係を築くことは容易ではありません。長年フィンランドで教師を務めたリッカさんのリアルな苦労話も満載なので、現役の先生が読んだとしても共感する節はあるのではないでしょうか!?

「教育は大変だけど、やりがいがある 」これは古今東西不変の心理なのかもしれません。

こんな人にオススメ

 

1. フィランド教育に興味がある人

2. 噂と現実の違いをしっかりと学びたい人

3. 海外の教育を日本にうまく活かしたい人

 

 

「フィンランド教育」というあやふやな定義の言葉に惑わされないための名著!

僕の知る限り、ここまで読みやすい「フィンランド人がフィンランド教育について書いた本」は本書だけです!

 

 

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